犬の病気と予防接種

 犬は自分の体調が悪くても飼い主に言えません。そんな犬の健康状態を把握するかは犬の病気を知ることです。いつもと違う行動や症状がある時は、ほっとかないで調べてみる必要があるかもしれません。

  事前に病気を防ぐことの出来る予防接種、何が必要か、なぜ必要かを知っておく事も大事なことです。

犬の病気と予防接種

犬の行動や症状により考えられる病気

 犬の行動や症状で、疑うべき病気を上げてみました。
必ずしもこれらの病気であるとは一概には言い切れませんが、放っておくと重症化する恐れも有ります。早期病気発見の為に参考にしてください。

目に炎症がある

 角膜炎、乾性角結膜炎、結膜下出血、結膜炎、緑内障、眼瞼内反症

目が白濁する

 角膜炎、白内障、緑内障、糖尿病、パンヌス

目やに、涙が出る

 結膜炎、ジステンパー、角膜炎、栄養欠乏、血液疾患、伝染性肝炎、眼瞼内反症

眩しがる

 角膜炎、乾性角結膜炎、眼瞼内反症、眼瞼外反症、角膜腫瘍

鼻が乾燥する

 細菌・ウイルス等による感染症、白血病、体力低下、リンパ腺腫瘍、ビタミンの不足

鼻汁が出る

 ジステンパー、インフルエンザ、鼻炎、鼻腔内腫瘍、蓄膿症

耳が臭い

 外耳炎、寄生性耳炎(耳疥癬)、耳血腫

歯ぐきが青白い

 骨髄性白血病、胃拡張、心不全、胃捻転症候群、肺炎、寄生虫、リンパ肉腫、栄養不良、脾臓の腫瘍

口臭がある

 歯槽膿漏、肺炎、腎炎、敗血症、歯肉炎、口内炎、胃腸障害、呼吸器疾患

腹部の膨満

 胃拡張、胃捻転症候群、想像妊娠、腸閉塞、膀胱破裂、フィラリア症、心不全、回虫症、肝硬変、腸内ガス

尻スベりをする

 肛門周囲腺腫瘍、肛門周囲瘻、肛門嚢膿瘍、条虫症

咳をする

 鬱血性心不全、フィラリア症、ジステンパー、肺炎、ケンネルコフ、気管支炎、僧帽弁閉鎖不全症、肺水腫、気管虚脱

歩き方がおかしい

 膝蓋骨脱臼、骨折、股関節形成不全、骨腫瘍、椎間板ヘルニア

吐き出す

 食道内異物、食道炎、胸腔内腫瘍、先天性巨大食道症、食道狭窄、血管異常による食道拡張

嘔吐

 ジステンパー、パルボ、腸重積、伝染性肝炎、尿毒症、腸管内異物、心臓疾患、結核、肝臓病

痩せてくる

 ジステンパー、腸管内寄生虫、糖尿病、リンパ肉腫、白血病症候群、心臓疾患、結核、腎臓病

呼吸困難

 熱射病、気管支炎、フィラリア症、異物吸引、日射病、鬱血性心不全、肺炎、レプトスピラ、胃拡張、脳外傷

血便が出る

 急性腸炎、パルボ、コクシジウム症、十二指腸虫症、大腸炎、伝染性肝炎、鞭虫症、レプトスピラ症

血尿が出る

 膀胱炎、尿道結石、タマネギ中毒、尿道・膀胱・膣の腫瘍

フケが出る

 疥癬症、皮膚糸状菌症、脂漏症、アトピー性皮膚炎、肛門嚢炎、アレルギー性皮膚炎、皮膚腫瘍

下痢をする

 パルボ、ジステンパー、コクシジウム症、伝染性肝炎、炎症性腸疾患、毒物飲食、呼吸障害、腫瘍

体重が減少する

 吸収不良症候群、コクシジウム症、ジステンパー、心筋疾患、食道拡張、条虫症、鞭虫症、糖尿病

体を掻く

 疥癬症、過敏症、細菌性皮膚感染症、シラミ、ノミ、毛包虫症、ノミアレルギー性皮膚炎、咬み傷、刺し傷

痙攣する

 狂犬病、痙攣性発作、ジステンパー、脳の外傷、毒物誤飲による中毒、真性てんかん

脱水症状

 急性腸炎、狂犬病、子宮蓄膿症、ジステンパー、肺炎、膀胱破裂、パルボ、尿毒症

グッタリする

 水頭症、低血糖症、日射病、熱射病

犬の予防接種

 犬の散歩やドッグラン、最近では色々なショップやホテル、旅館等で人間は勿論他の犬や動物と接触する機会が増えています。感染症のリスクはかなり高いと言えます。
犬の健康、安全を考えれば予防接種は必要です。病気によっては人間にうつる病気も有るので気を付けたいですね。

 予防接種には大きく分けて2種類有ります。
一つ目は義務づけられている「狂犬病予防接種」です。昔は年2回行っていたと思うんですが、最近では年1回に成っています。もう一つの予防接種は飼い主が任意で行う感染症予防のための「混合ワクチン接種」です。

狂犬病予防接種

狂犬病

 狂犬病は人間にも感染する病気で「人畜共通感染症」非常に恐ろしい病気で、法定伝染病に指定されています。

 狂犬病のウイルスは動物の神経組織、唾液腺、唾液中に多く、血液や体液中にはほとんどありません。咬傷や傷口からの感染で発症しますが、まれに空中飛沫による感染もあるとの事です。

 狂犬病の潜伏期間は20日~90日で、ウイルスの侵入口が脳から遠いほど遅く発症します。

狂犬病の症状
  1. 前駆期
    常に不安な様子で落ち着きが無い鬱(うつ)状態に成り、睡眠障害を起こしやすくまた、暗い場所に隠れたり急に驚いたり異常な行動をとる症状が1日~2日ほど続く。
  2. 興奮期
    いわゆる狂犬になり、鼻先に触れる物に咬みついたり、フラフラと歩き回る。呼吸困難になり声もしわがれ、水を飲むことも出来なくなる。尾を股に丸め込み、目つきは鋭くなり見るからに凶暴な犬状態となる。この状態が2日~3日続く。
  3. 麻痺期
    行動や思考能力は鈍り、筋肉は麻痺状態に成る。そのため肢もフラフラしほとんど歩行が出来なくなります。目はうつろえ痩せ衰えて死に至ります。狂犬病は一旦発症すると、現在の医学では治療することは不可能です。
狂犬病予防について

 日本では狂犬病の発症例はほとんど無く、1957年以降3件あるがいずれも海外で感染したものです。
海外では狂犬病の予防接種が徹底されていない国がまだあるため、海外旅行したら極力その国の犬には近づかない様にしましょう。

 日本では「狂犬病予防法」という法律があり、ワクチン接種が義務化されています。
狂犬病のワクチンは狂犬病予防法により、生後3ヶ月以上の全ての犬に、1年に1回の接種が義務付けされています。

狂犬病予防法
第2章 通常処置
第4条
 犬の所有者は、犬を取得した日(生後90日以内の犬を取得した場合にあっては、生後90日を経過した日)から30日以内に、厚生労働省令の定めるところにより、その犬の所在地を管轄する市町村長(特別区にあっては、区長。以下同じ。)に犬の登録を申請しなければならない。ただし、この条件の既定により登録を受けた犬については、この限りではない。

混合ワクチン接種

 ワクチン接種は犬の飼い主の任意で行うものだが、犬の健康を考えれば接種しておいた方が良いだろう。昨今では色々な場面での感染リスクが多く、またワクチンの安全性、効能等の品質が良く副作用もほとんど無いので、ワクチン接種をお勧めします。

ワクチンで予防できる病気

狂犬病
ジステンパー
アデノウィルス1型(犬伝染性肝炎)・2型感染症
犬パラインフルエンザ(ケンネルコフ)
犬パルボウィルス感染症
レプトスピラ症
コロナウィルス感染症

混合ワクチン

 混合ワクチンとは、1回の注射で何種類かのワクチンを接種し、複数の病気の予防が出来ます。
何種類のワクチンを注射するかは、犬種や環境等により違うので獣医に相談することをお勧めします。

ワクチンの摂取時期

 犬が伝染病に感染しやすいのは、子犬の時期ですが母乳で育つ事により、母犬が持つ病気に対する抗体で、新生子は一時的に免疫を得ることが出来ます。この免疫のことを「移行抗体」と言います。
この時期子犬は免疫機能が未発達のため、ワクチン接種をしても効果が無く、有効な抗体を作ることが出来ません。

 移行抗体は生後6~8週齢で消失します。この時期を過ぎると感染の危険が増えます。
本来、移行抗体が消滅と同時にワクチンを接種するべきですが、個体差もあるため実際には生後45日以降から2回~3回追加接種し、確実に抗体を持たせる方法がとられています。